生きた長さではなく、どう生きたかが問われる

いつでも死ねる 帯津良一

私でも、嫌なことの1つや2つはあります。
イライラすることも、腹の立つこともあります。
しかし、いつまでもクヨクヨすることはなく、いつ頃からか嫌なことを翌日の持ち越すことはなくなりました。
ビールを1杯飲んで、「よし、今日も終わった」と、スイッチオフになると、その1日の出来事が、ザーッと雨に流されるように消えていくのです。
今日が最後の1日だと思って生きるようになって、さらにリセットがしやすくなりました。

アナトール・プロイヤードさんという評論家が「癌とたわむれて」という本を書いています。
プロイヤードさんは、前立腺がんになり、分かった時には全身の骨に転移していました。
プロイヤードさんは、全身に骨転移が分かったとき、「ときめいた」と言っています。
何故ときめいたのか、これが中々しゃれています。
「我が人生にも締め切りが設けられた」というわけです。
彼は優秀な評論家でしたから、いつも締め切りに追われていました。
締め切りがあるから、いい原稿が書けるということも知っていたと思います。
自分がガンと分かったとき、それを人生の締め切りと捉えた感性には感服します。
締め切りのない人生は、どうしてもだらだらと怠惰になってしまいます。
締め切りが設けられた瞬間に、ピシッと気持ちも締まります。
締め切りまで何をしようかと、真剣に考えます。
今までは躊躇してきたことも、思い切って行動できるでしょう。
人生が一気に充実するのです。

長生きばかりが求められますが、大事なのは生きた長さではなく、どう生きたかです。