独り占め

みっともなお金の使い方 川北義則 

自分のためだけにしかお金を使わないのは、みっともないことだと思う。
お金はできる範囲で、人のために役立つような使い方をするべきだ。
なにもたくさん使えというのではない。
身の丈に合った使い方をすればいい。

人のために使えというと、釈然としない人がいるだろう。
自分で稼いだ金だ。
人からあれこれ言われる筋合いはない。
俺のため、家族や気に入った人間のためだけに使いたい。
それはそれでいい。
とにかく人のために使ってくれればいいのだ。
私が心配するのは、大金を持っているのに貯め込んでいっこうに使おうとしない人たちだ。
何に使ってもいい。
そのお金は巡り巡って人のためになる。
人のためというとき、直接的な貢献は考えなくてもいい。
してはいけないのは、独り占めだ。

ある老人は、コツコツ貯めた1億なにがしかの金を、自宅の庭の木の下に埋めていた。
彼は毎日庭に出て、お金があることを確かめるのを日課にしていた。
彼にとっては誰にも知られないひそかな楽しみだったが、ちゃんと知っている泥棒がいて、ある日こっそり掘り出して持ち帰ってしまった。
老人はショックで病気になり、まもなく亡くなった。
庭の大金の存在を誰も知らないまま老人が亡くなったら、お金は誰のためにもならず、眠ったままだった。
泥棒に倹約家はいないだろうから、1億円くらいのお金は瞬く間に使ってしまうだろう。
泥棒は犯罪だが、お金が回ることで経済がよくなるのも事実である。