泣きながら抱きしめてくれた母

親のこころ 49歳男性の投稿から

大学受験に頑張っていた時のことです。
しかし、望んでいた大学は残念ながら不合格。
私を入れて仲間三人が同じ大学の同じ学科を受験していました。
友人から電話があり、他の二人は合格していたことを知りました。

「良かったな」と合格祝いの言葉をかけたものの気持ちは余計に落ち込み、誰にも会いたくないと部屋に閉じこもってしまいました。
残るは、唯一つだけ受験予定の大学がありましたが「もう、どうでもいい!」とやけを起こし、部屋の引き戸につっかい棒ををして、受験に失敗した惨めさと、友人たちの合格を知ったことによる悔しさで、そのやりきれない気持ちを必死に耐えていました。

そんな時、引き戸が開かないことを知った母が、部屋の外で私の名前をしきりに呼んでいました。
とても返事をする気になれなかった私は、時間が経てばやがて立ち去ると思い、母の声を無視してヘッドホンを耳に押し当て、大好きな曲をガンガン鳴らして聞いていました。

ところが、立ち去るどころか母の声は次第に大きくなり、今までに聞いたことがない大声と変わっていきました。
母は引き戸を持ち上げ、それを投げ捨て部屋に入ってきました。
「これは殴られるかもしれない」と一瞬思いました。
しかし母は、これ以上ない強い力で私を抱きしめました。
「何をバカなことをしているの」泣き声で叱ってくれた、あの時の母を今も忘れることはできません。

もう腰は曲がり、その時の勢いはとても見ることはできなくなった母ですが、何としても精一杯のご恩返しをしたいと思っています。
私にとって自慢の母に、ただただ「感謝」しています。