母の教え

投稿より 43歳男性

母は、全てを前向きに明るく善意に受け止め、苦しいことや辛いことがあっても、絶対に他人に転嫁しない人でした。
私は小さいころから病気がちで、夜咳き込むことがよくありました。
母はさぞ心を痛めていたでしょうが、そんな態度はおくびにも出さず、ひたすら医者に通ってくれました。

小学校二年生の時、恥ずかしい話しですが、友達の間で万引きがはやり、私もアイスクリームを万引きをしたことがありました。
ところが、それが店の人にはばれていて、あとで家に注意に来られました。
母は驚いてひたすら謝罪し、弁償をしていました。
店の人が帰ってから、医者に行くために母の自転車の後ろに乗りました。
その道中、万引きのことを聞かれました。
怒られるかと思っていましたが、そうではなく、母は今まで見たことのないくらい、ひたすら悲しんでいるようでした。

今思えば母は、「何と情けない子に育ててしまったのか」と、自分の力不足を嘆いて反省していたのだと思います。
私はその時、こんなに母を悲しませるのであれば、もう二度と悪いことはするまい、と固く心に誓いました。

それからも仲間の誘いがありましたが、断固断り、以後一切の悪に手を染めることはありませんでした。
その後も私の体調はすぐれませんでしたが、ぐれることなく、筋を通して生きてこられたのは、あの時の母の悲しそうな顔があったからだと思います。

社会人になってからは、不思議なほど順調に物事が運ぶようになりました。
これもひとえに、子を想う母のおかげと感謝の気持ちで一杯です。