段取りをつけて、生活にメリハリを

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

こんな患者さんがいた。
仕事の内容は、記者が原稿を執筆する際に使う資料を事前に分野ごとに整理しておくというものだが、その資料が膨大なために、ほとんど休日出勤もして働いていたそうだ。
しかし、その人の話しを聞いているうちに、忙しいことには忙しいのだろうが、工夫の仕方があるように思えてきたのである。

そこで私は、2つのことを提案しました。
1つは、まずは休日出勤をやめて、休日には仕事をしないこと。
2つ目は、自動車の免許をとるために教習所に通うこと。
要は、無理なスケジュールを強制したわけだ。
こうすれば遅くとも夕方の6時には仕事を切り上げて、教習所に通わなければならない。

最初のうちは、「それでは仕事が間に合わなくなる」と難色を示していたが、私はしつこく勧めた。
そして、やってみればできたのだ。
つまり時間の使い方が、上手ではなかっただけなのだ。
その人なりに段取りをうまくつけていく習慣を持てば、休日にはしっかり休めるし、また仕事帰りに教習所に通える余裕もできるようになった。

段取りをつける目的は、仕事を効率よく運ぶということもあるが、もっと大切なことは、生活にメリハリをつけるということ。
これが、心の健康にはいいのだ。
ノイローゼにしてもウツにしても、ダラダラした生活をメリハリのある生活に見直してみるだけで、随分改善するのだ。