死生観

80歳を過ぎても現役の医者で、ホスピス医の著書から

何かと不平等と感じられるこの世の中で、唯一平等なことは、誰でもいつかは「死」を迎えるということです。
だとすれば、ガンになるならないに係わらず、人は生きているうちに必ずどこかできちんと「自分の死」というものに向き合っておくべきです。
死を迎えざるを得ない可能性の高い人にとって大事なことは、死を迎える心構えと、この後自分はどう生きるのかという決心です。

この医師が看取った人は、10代二人、20代二人、30代七人、40代は100人以上、それ以上の年齢の方は2,500人以上だそうです。
10代、20代の人は、終末期に意外に不穏にならずに過ごして亡くなるそうです。
30代は幼い子供がいる人が多く、ガンの進行が早く、頭が混乱したままで死を迎える人が多いようです。
40代~50代は、どうしても死を受け入れることができずに、最後まで治療にすがる傾向が強く、治療が効く様子がなくても苦しい治療を進んで受ける傾向にあります。
医師に治療を中止すると言われると、高額の民間療法に走る人も少なくないといいます。

そんな中で、35歳の子宮頸がんの女性は、高齢の両親のために浴室、その他を改築し、10歳の娘さんを離婚した元夫に託して亡くなりました。

何歳になっても、この世から去らなければならないという感傷は強いでしょう。
しかし、人にはどんな手段でも避けることのできない「死」が、例外なく必ずやってきます。
医療には限界があります。
特に、ある程度以上進行したガンは、手術はもちろん、放射線治療や抗がん剤治療にすがり過ぎず、放置して自然の経過に任せることで、最も穏やかに死を迎えられるのです。
人生の最後に死にたくないとあがき、精神不穏が続いて死を迎えるのは、本人にとっても身内にとっても、決していいことではありません。
これを避けるためには、自分なりの確固とした「死生観」を持ち、折に触れて、「人生や自分の死をよく考えながら生きる」ことが大切なのでしょう。

2,500人以上を看取って言えることは「助からないと悟った時は死を受け入れないと、安らかに死ぬことはできない」ということです。