死を考える習慣をつける

いつでも死ねる 帯津良一

自然治癒力がいくら働いても治らない病気はあります。
何しろ人間の致死率は100%なのですから、すべての人がいつか治らない病気や事故ででこの世をさっていきます。
人は、いずれ必ず死んでしまうのにどうして生きているのでしょうか?という哲学的な質問をされることがあります。
こういう質問が出るのは、死をネガティブに捉えているからです。
輪廻転生があるかどうかは分かりませんが、私は死んでも私のいのちは永遠に生き続けます。
人間の成長に終わりはありません。
限りなき成長を求めて、私たちはこの世に生まれ、生きているのです。
そして死もまた、いのちを育てるためのとても大切な瞬間なのです。

歳をとってくると、もう1つの大きな世界からのささやきが聞こえてくるといいます。
大きな世界というのは、死後の世界のことです。
そのささやきに耳を傾けるのが老いなんだというわけです。
若者が死のことを考えずに生を謳歌するのは仕方ないでしょう。
しかし、老年といわれる年齢になったら、あの世からのささやきに耳を傾けたいものです。
死について書かれた本を読むのもいいでしょう。
折に触れて死について考えてみるのもいいでしょう。
自分のラストシーンを思い描いてもいいのではないでしょうか。
そうすれば、必要以上に死をネガティブに捉えることもなくなります。
ほんの5分でも、晩酌をしながらでも、死のことを考えて生きる習慣をつければ、あの世からのささやきが聞こえるようになります。
そのささやきは、暗くて恨めしいものではありません。
遠くで祭囃子が聞こえてくるようなもので、陽気で明るく、途中で仕事を投げ出しても出かけてみたくなります。