死を受容するためには、生きる意味を再構築する

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

日本では、それまで仕事を持っていた人が重い病気になったとき、それでも仕事を継続するという人が少なくない。
働くということは、対価を得ることができると同時に、患者さんが社会的存在であり続ける重要なファクターになる。
すべての仕事を中断して治療に専念するよりも、少しでも仕事を残した方が、患者さんにいい作用をもたらすということはしばしばある。
だが、人生の残り時間が有限であることを意識すると、すべての仕事をこなすことはできなくなってくる。
その時に重要なのは、「これをやらなくては」と考えていた以前の自分の考えから自由になることである。

死んだらどこに行くのだろうか。
今はまだ、ぼんやりとしたイメージしかない。
変えることのできない事実を受容するためには、生きる意味を再構築する必要がある。
私は若くしてガンになってしまったが、そのおかげで人生の残り時間をみつめ、しっかりと向き合う姿勢をとることができた。
医師として、人間として、私は今ほんとうに自分がやるべきこと、やらなければならないことがクリアに見えてきた気がする。
少なくとも、死に対する恐怖感はない。
ガンで死ぬというのは、思っているほど嫌なことではないかもしれない。
死の直前まで苦しみぬく可能性はとても低いと思っている。