死の恐怖を乗り越える 2

どれだけ遊行に美食に時間とお金を費やしても、性愛の世界に没頭しても、いずれ慣れが生じて、人は幸せとは感じなくなります。
そこで、美しく生きることの大切さがクローズアップされるのです。
死んで逝く人たちは、自らの人生を誇れるものだったのかを考えるようです。
そして、自分が成してきた「善き行い」に救われるといいます。
人は誰でも、自らの人生が意味あるものであることを願っています。
それを最後に充足できるのは、遊行・美食・性愛といった楽しみを極めたことよりも、むしろ誰かの支えになってきたという自分の善行でしょう。

人それぞれ価値観に差があります。
もがき、もがき続けた結果、最後に充足感を覚えることもあるかもしれません。
けれども自分が誇れる人生とは何か、もし自分の命が残り少ないとしたら、このままで悔いはないのか、それを各人が考えていくことが大切なのでしょう。

命は、世界で何かをするための入場券です。
その世界で、自分が「利他」の心で生きていこうと思えれば「死」は完成であり、一つの終着点となります。
その満足感を持って、今世から退場していくのです。