死が生物の進化をつくる

生物はなぜ死ぬのか 小林武彦

生命の誕生と多様性の獲得に個体の死や種の絶滅といった「死」が、いかに重要だったかということが分かりました。
つまり死も、進化がつくった生物の仕組みの一部だというわけです。
生物の死に方は、1つは食べられたり、病気をしたり、飢えたりして死んでしまう死があります。
もう一つの死に方は寿命によるものです。
こちらは、遺伝的にプログラムされています。
進化が生き物をつくったとするならば、寿命にも生命の連続性を支える重要な意味があるのです。

2500年前の日本人の寿命は13~15歳だったと考えられています。
狩猟による事故死、病気や栄養不足による乳幼児の死亡率が非常に高かったためです。
幼少期を生き延びた人は30~40歳までは生きたようです。
現在よりも多産で多死のこの状態が、結果的に多様性を生み出し、後の人類の大躍進につながった可能性が高いと思われます。