棺桶に入ってみる

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

私は古希の記念として、組み立て式の段ボール製の棺桶を手に入れました。
段ボール製といってもヘナヘナではありません。
強化段ボールですので、板みたいに硬く、折りたたんでケースに入れれば、保管もわずかの空間で足ります。

自分の死を考えるための具体的な行動の中で、いちばんのお勧めが、この棺桶に入ってみることです。
なぜかと言いますと、私たちは、最後には裸に薄物をまとわされて、寝返りもうてないほど狭い、畳半分ほどの空間に押し込められてしまいます。
そこには、地位、名誉も権力も財産も何1つ持っていけないことが実感できるからです。

そうすると、執着心が薄れます。
執着心が薄れますと人生観に変化が出ますし、物の整理が進みます。

初心者の場合、まず棺桶に入って最初にすべきことは、これまでの人生を振り返ってみることです。
そして、これまでのことが肯定できたら、今後どう生きるかに思いを馳せてみることです。
今日1日、明日死んでもいい生き方ができたかを思い、反省し、よく朝、目が覚めるようなら今日1日を精一杯生きる、これを最後の1日まで繰り返すことができれば、非常に充実した一生になるはずです。