杜子春 3

やがて、彼の前に虎や大蛇が現れ「そこにいるのは何者だ。返事をしないと命はないぞ!」と、脅迫してきた。
沈黙を守る杜子春はついに殺されて、地獄の底へ落ちていく。
閻魔大王は、雷のような声で「こら、その方は何のために峨眉山の上で座っていたのだ!」と怒鳴りつけた。
しかし、杜子春は返事をしない。
怒った閻魔は、剣の山や炎の谷など、あらゆる地獄の責め苦をしたが、彼は一言も口をきかなかった。
あきれた閻魔は、「この男の父母は、畜生道に落ちているはずだから、すぐにここに連れてこい!」と、鬼に命じた。
間もなく連れてこられた二匹のやせ馬を見て、杜子春は肝がつぶれるほど驚いた。
姿は馬でも、顔は忘れもしない死んだ両親ではないか・・。
閻魔は叫ぶ。「こら、その方は何のために峨眉山に座っていたのだ。白状しなければ、今度はその方の父母を痛い目にあわせてやるぞ!」と叫んだ。
それでも杜子春は返事をしない。
「この不孝者めが、その方は父母が苦しんでも自分さえよければいいと思っているのだな・・!」

鬼どもは鞭で二頭の馬を容赦なく打ちのめし始めた。
馬になった父母は、身もだえして血の涙を浮かべ、苦しそうにうめいている。とても見ていられない。
「どうだ、まだ白状しないか」閻魔が杜子春に言ったときには、二頭の馬は肉が裂け骨は砕けて息も絶え絶えであった。
杜子春は、仙人との約束を守ろうとして、固く目をつぶっていた。
するとその時、杜子春の耳に声とは言えないほどの、かすかな声が伝わってきた。