杜子春 1

中国の唐(618年~907年)の時代、都の西門の下に貧しい青年がぼんやり立っていた。
その名は”杜子春”である。
そこへ老人が現れ「おまえは何を考えているのだ?」と声をかけてきた。
「私は今夜寝るところもないので、どうしたものかと思案していたのです」
「そうか、それはかわいそうに。では私がいいことを1つ教えて進ぜよう」
老人は、杜子春に黄金が埋まっている場所を教えた。
彼は1日のうちに、都で一番の大金持ちになった。すぐに立派な家を買って、皇帝にも負けないくらい贅沢な暮らしを始めた。
すると、今までは道で会っても挨拶さえしてくれなかった人たちが、毎日遊びに来るようになった。
彼はいい気になって、毎日酒盛りを続けていった。

しかし、お金には限りがある。
働かずに贅沢ばかりしていたので、次第にお金は底をついていった。
すると、これまで遊びに来ていた人たちが挨拶さえしてくれなくなってしまった。
薄情なものである。彼は1文無しになると、都の中で1杯の水を恵んでくれる人さえいなくなった。
途方に暮れた杜子春は、依然と同じように都の西門の下に立っていた。
するとまた、あの老人が現れ杜子春に黄金のありかを教えてくれた。
彼は、天下一の大金持ちになったが、前と同じ結末を迎えてしまったのである。