末期ガン患者さんのケア

いのちの言葉 ホスピス医 柏木哲夫

私とホスピスとの出会いは、30歳ころのアメリカ留学での体験でした。
その体験とは、1人の末期ガン患者さんのケアに携わったことです。
それは、主治医はもとより、ナース、ソーシャルワーカー、牧師、薬剤師、栄養士、そしてボランティアといった方々が1つのチームを編成し、1人の患者さんのケアにあたるというものでした。
チーム全員で、患者さんのケアについて真剣に話し合い、そこで決定したことを現場で生かしていくのです。
そこに私は、精神科医として参加したというわけです。

私は最初、あとひと月くらいで、死を迎える人に対して、なぜこんなに熱心に討議をし、ケアの方法を考えるのかという疑問を持ちました。
しかし、何度も会議を重ねていくうちに、チームの人たちが病気を治すことと同様に、治らない、死を迎えざるを得ない人たちの苦痛を緩和し、精神的に支えることも重要な医学の一分野としていることが分かってきたのです。