最後は人に委ねてもいい

ホスピス医の著書から

生きていれば、人に頼らなければならない瞬間が必ずやってきます。
特に人生の残り時間が少なくなれば、どれほど気がかりなこと、やりたいことがあっても、自分ではどうすることもできません。

私はこれまで、最期の時が来た患者さんをたくさん診てきました。
多くの患者さんは最初のうち、やり残したことを思って苦しんだり、残される者を思って悩んだり、他人に頼らなければ生きていけない自分を責めたりします。
でも患者さんは時間が経つにつれ、自分にできないことは人に委ねればいいのだと気づきます。

そして委ねることを決めた人は、必ず穏やかな表情に変わります。
人は本来、人と支え合い、時には迷惑をかけあって生きていくものです。
たとえ肉体がこの世から消えても、大切なものを大切に思う気持ち、大事な人たちとのつながりは残り続けるのです。