普通のことがうれしい

いのちの言葉 柴田高志医師

痛くもないのに痛い注射をされ、1時間半から2時間半はウトウトする。
そしてまた目が覚めると、痰がたまって気持ちが悪い。
また注射をされる。
3回目に、ようやく痰がたまったことに気がついてくれて、吸引をしてくれました。

やがて朝の6時になり、今度はやさしいナースに交代しました。
「いかがですか。9時になったら担当の医師が出てきます。経過が良かったらこの管を抜いてもらいますからね」と言ってくれまして、ホッとしました。
自分の意志を伝えられない苦痛、そしていつまで続くか分からない苦痛、限られた時間であれば痛みは辛抱できるんです。

寝返りも打てず、ただ寝ていることがこんなに辛いのかと思いました。
そうして1週間後、主治医に言われるまま、恐る恐るベッドの上に起き上がってみました。
窓から市街地がパーッと広がって見えたのです。
そのときは、本当に感動しました。
さらに、一歩二歩と歩けたときは、自分の足で歩けることがこんなにうれしいことなのかと思いました。