死ぬときに幸福な人より
私たちは、一人一人に役割や使命が与えられています。
その意味では、みんな平等です。
しかし、どんな役割や使命を担っているかは人それぞれ違います。
そこでは、みんな平等ではありません。
長年連れ添ってきた妻がガンで入院しました。
これまで妻を顎で使っていた夫は、妻の体調を気づかうものの、いたわりの言葉ややさしい言葉がかけられません。
夫はそのことに苦しみ、「先生、どうしたらいいでしょうか？」と、わたしに相談を持ち掛けてきました。
私は答えました。
「何も言わなくてもいい。ただ黙って奥さんのそばにいてあげなさい。今は、それだけで十分です」
夫は黙ってうなずきました。
私たちのやり取りを近くで見ていた奥さんは、何も言わずに大粒の涙を流しました。
時間と空間を共有するだけでも、価値のあることなのです。