明るい貧乏という技術

がばいばあちゃんの口癖 島田洋七

「明るい貧乏」っていうのも、今考えるとすごい技術だと思うんですよ。
小学校3年生ぐらいまでは、週に一回くらい、晩飯を食えない日があったんです。
そんなときに、あったかい焼き芋が食卓に並ぶことがありました。
「うわあ、焼き芋だ!」
と喜んでいると、ばあちゃんは言ったんです。
「見るだけ~」って。
「いま、ご飯があるやろ。そんないっぺんに食わんでも、朝になったら食え」

こんなこともありました。
学校から帰ってきて、「腹減った」と私が言っても
「気のせいや」と言われました。
私も子どもなので、そうかなと思って、まんまとばあちゃんにだまされたもんです。
当時は、テレビもラジオもない時代でしたから、家にいても退屈で
「ほな、ばあちゃん、外に遊びに行ってくる」と言って、出かけようとすると
「遊びに行ったらあかん。腹が減る」
「どうしたらええの?」
「早く寝なさい」
そうすると、夜中の11時ころにお腹が減って目が覚めてしまいます。
「ばあちゃん、やっぱり腹減った」と言うと
「夢や」と返されます。
そう言われると、布団をかぶってるもんだから、夢かなあと思うわけです。
そうして朝になって「ばあちゃん、朝ご飯」と言ったら今度は
「昨日、食べたやないか」とかわされます。
いつ食べたんや、ちゅう話しです。