掃除から挨拶が始まった

ココロの架け橋 中野敏治

教育行政から学校現場へ、教頭勤務になりました。
学校へ戻ったら「あれもしたい、これもしたい」といろいろ考えていました。
その1つが「掃除」です。
学校へ着任して数日後、まず学校の生徒昇降口付近の掃除をはじめました。
毎朝、昇降口付近を掃除しながら、登校してくる生徒たちに挨拶をしています。
声をかけると、すべての生徒が元気に「おはようございます」と挨拶を返します。
この挨拶も数日たつと変化がありました。
掃除をしていて、登校してきた生徒に気がつかないでいる私の背中越しに、生徒たちが「おはようございます」と声をかけてくれるのです。
驚くことに、20メートル以上離れた場所から大きな声で「おはようございます」と帽子を取りながら挨拶をしてくれる野球部の生徒も出てきました。

生徒は純粋です。
昇降口付近を掃除していると、思いがけないことが起きます。
私の横を挨拶しながら通り過ぎた女子生徒がつま先で歩き、昇降口に入っていくのです。
私が掃除をした場所を汚したらいけないと思って、つま先で歩いていたのです。
笑いながら「いいんだよ。普通に歩けば」と声をかけました。

地域ボランティアとして、毎朝、生徒たちの登校を見守ってくれる方がいます。
その方とも自然と声を掛け合うようになりました。
毎日挨拶をかわし、地域のこと、生徒のことなどをいろいろ話してくれます。
毎日の掃除から挨拶が始まり、会話が生まれたのです。