挫折が人をやさしくしてくれる

いつでも死ねる 帯津良一

挫折を知らない人は、何でも思い通りになると勘違いし、自分が正しいと思うことを人に押し付けてしまいがちです。
まるで数学の問題を解くように人の気持ちを理解しようとしますから、心の機微を感じとることができにくくなります。
そういう人が、周りから慕われるような大人になれるでしょうか。
苦しみや悩みを抱えた人の気持ちが分からない人は、医者に向いていません。
相手の心の傷やコンプレックスを想像できるのは、自分も挫折し、人間としての幅も奥行きも広くなったからです。
だから、私は予備校生たちに「挫折しておめでとう!」と声をかけているのです。

そもそも、挫折するのは、夢とか目標があるからです。
挫折が嫌いな人は、夢も目標も持たなければいいわけです。
でも、そんな人生が面白いはずがありません。
夢や目標があって、それに一生懸命に向かっていると、挫折という刃が襲い掛かってくる。
そこで転んだり、傷ついたりするのだけれども、それでも刃をかいくぐって前へ進んでいく。
すると、また違う刃が・・・という繰り返し。
その緊張感とスリルが人を成長させるし、人生の面白みに繋がっていくのだろうと思います。