愛メずる

いのちの言葉 JT生命誌研究館館長 中村佳子

死を避けるためによく言われているのがクローンです。
これは、自分の細胞のDNAを卵の中に入れて、それを誰かのお腹の中に戻して、赤ちゃんを産むのです。
すると、私と同じDNAを持った赤ちゃんが生まれてくるわけです。
でも、クローンも厳密には同じものではないということが、生物学ではっきりと分かってきました。
不思議なことですが哺乳類は、一回、精子か卵子を通らないと、全部の遺伝子がきちんと働かないことが分かったのです。
これは、どこかで自然がクローンに歯止めをかけたのかなと思っています。

生き物の本質を見つめていこうとすると、生き物の素晴らしさが見えてきます。
ここで大事なのは、時間をかけるということです。
今の時代は、便利さを追求して時間をかけることを避けようとします。
赤ちゃんは泣いてほしくないときに泣いたり、それこそ思い通りになりません。
それでも、時間をかけてお乳を飲ませながらじっと見つめていると、「かわいいなぁ~・・」という気持ちが湧いてきます。
時間をかけるという本質を見つめることで、愛メずるという気持ちが湧いてくるのです。