意識や思考の範囲外の働き

いのちの言葉 作詞作曲家 小椋佳 

人間の意識や思考といったものは、一人の人間の構成要素の一部でしかありません。
たとえば、食欲というのは、私たちの意識や思考や意思以前に、別の所から立ち上がってくるものです。
すなわち私は、「私」のコントロールの範囲外の働きに突き動かされて食事というものを重ねているわけです。

人間は例外なく死を迎えます。
その限りでは、私たちの肉体は、機能停止に向かって機能しているという言い方をせざるを得ないわけです。
しかし、最終的にはそうだとしても、通常は、いのちを存続させるという方向で機能してくれています。

僕自身の話しになりますが、実は57歳の時、僕の胃はガンに冒されていました。
手術は胃の四分の三を切除するものでした。
ガンを患ったことで、その後いろいろな取材を受けましたが、必ず出てきた質問が「ガンとの闘病で人生観はどう変わりましたか?」というものです。
これには閉口いたしました。
変わったことが当然のように期待されていることが分かるのです。
僕は何も変わっていないのにです。