意思を伝えること

生きがいの力 柴田高志医師の話し

私は医者になって45年になります。
倉敷市下津井の漁師さんたちのお会いして「いつも医者がいない。お金がないので、なかなか医者にかかることもできない」といった話しを聞き、何とか役に立ちたいという気持ちから夜間診療所を開業したのです。
とにかく医療に乏しく、また貧しい所で一人一人の状態は非常に重いものでした。
そこで、どんな病気の方でも引き受けようと、毎日120人くらいの方を診察しておりました。

ここで、私のガン体験についてお話ししたいと思います。
実は42歳の時、右の耳下腺がんにかかり、手術を受けることになったのです。
手術は8時間から9時間かかったようです。
麻酔から覚めると回復室でした。
ナースがやってきて「用があったら鳴らしてください」とカスタネットを持たされました。
気がついてみると、麻酔をかけるときに使われた管、チューブが口に中に入れられていて、しゃべることができないんですね。
しばらくして、喉に痰がたまり、とても気持ちが悪くなってきました。
そこでカスタネットを鳴らすと「何ですか?」と偉そうに言いながらナースが来ました。
でも、痰がたまっていることを伝えようがないのです。
すると、「傷が痛むんですか」と言われて、痛み止めの注射をされました。