想いのリレー 2

でも、あと数百メートルで新大阪ということもあり、私はそれほど気にならなかった。
しかし、運転手さんの一言で急に心配になってくる。
「お客さん、こりゃあ普通の渋滞じゃあない!」
「どういうことです?」
「前方で事故か何かありましたねえ。事故の規模にもよりますけど、この分やとちょっとしばらく動かなそうですよ」
新御堂筋線は一般道であるが、高速道路のような高架道路になっている。
一度乗ると次の出口まで、全く身動きが取れなくなるのだ。
何ということだろう・・・自分の不運を呪った。
息子の誕生日に出張が入るわ、何とか帰ろうとすれば事故渋滞に巻き込まれるわ・・・。
嘆いている場合ではない。私は前方の雨に霞んだ新大阪駅を見据えた。

「こっから走ります」
「えっ、こっからですか? 危ないですよ」
「いいんです!」
私はなかば押し付けるようにお金を払うと、戸惑う運転手を尻目に雨の新御堂筋に飛び出した。
ぬるく湿った風が顔に当たる。
前方の光、新大阪駅まではさほど距離を感じない。
鞄の奥から折り畳みの傘を出そうとしたが、このくらいの雨ならと思い返し、そのまま走り出した。
並んでいる車の列を横目に走る新御堂筋。
高速道路のようなこの道を一般人が走り抜けることはそうないだろう。
雨は最初こそこんなものかと思ったが、少しずつ強さと冷たさが増してきた。
距離もいざ走ってみると思ったより長く、目の前の光にはなかなか到達できなかった。
それでも何とか駅に到達したときには髪から水が滴り落ち、紺のスラックスは膝から下が濡れて真っ黒いに変色していた。
歩くとぐしゅぐしゅする。

ホームに駆け上がったとき、時刻は9時23分。
「間に合った・・・」
椅子にどっかり座り込み、安どの息をつこうとした私を次なる悲劇が襲った。
「プレゼント!??」
さっきまで脇にあったプレゼントがない。
「しまった、タクシーに忘れたんだ!」
身体の内側から嫌な汗が噴き出す。