悪性腫瘍だった

ココロの架け橋 中野敏治

ある日、1人の生徒が学校を休み始めました。
足に痛みがあるからと、町の病院に行ったのです。
そこで、診察したところ、すぐに大きな病院を勧められました。
そして数日後、大きな病院で診察を受けました。
その間、彼はしばらく学校を休みました。
数日後に彼の父親が学校へ来ました。
その日は曇りでしたが、父親はサングラスをかけていたのです。
応接室で父親と話をしました。
応接室でも父親はサングラスを外そうとはしませんでした。
父親の言葉に驚きました。
「息子の痛みの原因は、悪性の腫瘍でした」というのです。

その場の空気は一変し、時間が止まりました。
父親は話しを続けました。
「最初の病院で腫瘍の疑いがあると言われたとき、この医者は何を言っているんだと思ったんです。だって、小学校からずっとサッカーのレギュラーで、試合にもずっと出てきた息子ですよ。ケガはしても病気などしたことのない息子ですよ。その息子の足の痛みの原因が腫瘍だというんです。そんなこと信じられますか」

少し時間をおいて父親は話しを続けました。
「大きな病院に紹介状を書いてもらって、その病院でいろいろ検査をしたら、やはり腫瘍があるといわれたんです。信じられない、そんなの信じられない。そんなこと信じないですよ。信じろったって無理ですよ」