患者に安心感を与える医者なら

70歳からの選択 和田秀樹

薬が多すぎると、高齢者は通常元気がなく、いかにもヨボヨボしています。
患者が「薬を飲むと調子が悪い」などという訴えをした際に、真面目に対応して薬を減らしてくれるような病院なら、待合室の患者さんが元気よく、患者さん同士で旅行の打ち合わせなどをしている姿も見られます。

私は、医者の役割というのは、病気を治すことが第一なのはもちろんですが、患者に安心感を与えることも非常に重要だと思うのです。
医者のいうことを聞かない方が長生きできると述べてきましたが、それは現在の医者がたいてい検査することをメインにしていて、しかも50歳以下の人の健康常識を高齢者に当てはめて診断し、「あれをやめろ、これをやめろ」と言うことが多いからです。

もう50年くらい前だと思いますが、私の祖母がかかりつけ医に診てもらうということで、一緒についていったことがあります。
その医者は祖母の話しを一通り聞いてから、「そうか、そうか」とつぶやきながら聴診器をあてたあと、「うん、そのままで大丈夫やから、帰って1つ多めに寝とき」と祖母に告げていました。
検査も何も必要ないとのことでした。
患者の不安を聞いてくれて、それを解消してくれることに感銘を受けたことを覚えています。
このような、かかりつけ医を見つけることができれば、「治療よりもQORを優先したい」「薬は控えめにしたい」といった希望も伝えることができます。