患者になって初めて本当の医者になれる

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

サイモントン療法の次の段階では、目を閉じ、瞑想状態に入って全身をリラックスさせる。
次のステップは、イメージのスクリーンをいっぱいに広げ、自分の細胞がガン細胞と闘い、見事に勝利をおさめている様子をイメージする。
サイモントン博士の診療所の患者データは、ほかのがんセンターの同じような進行ガンの患者に比べて、平均余命は2倍も長いという。
精神には、このように信じられないパワーも秘められているものなのだろう。

「ドクター」という古い名画がある。
有能な医師がある日、咽頭がんに冒される。
彼は初めて、がん診断のための検査の非人間的なこと、医師の無神経な扱い、患者の底知れぬ恐怖感を味わう。
手術後、声が出なくなってしまった彼は、そのどうしようもない苛立ちから妻に当たり、同僚の姿に妙におびえるようになる。
最終的にこの医師は手術に成功し、声の喪失も手術後の一時的な症状で、やがて元通りの元気な姿で医療現場に復帰する。

彼はこの時「医師から人間になった」のだ。
現場に戻った彼は、以降、研修生に1日患者になることを命じる。
患者体験がなければ、本当にいい医者にはなれないと分かったからだ。