彼女らしく

ココロの架け橋 中野敏治

なぜ素直に喜べなかったのでしょうか。
それは登校する少し前に髪を染め、スカートをすごく短くし、アクセサリーをいっぱいつけての登校だったのです。
今まで一度もそんな恰好をして登校したことはありませんでした。
彼女の姿を見たとき察しました。
ここまでしないと彼女は登校できなかったのかと。
その姿を見ていて、なぜか彼女がいじらしく感じたのです。
でも、私の判断で彼女を家に戻しました。
「家に帰って着替えてきなさい」と。
彼女の姿を見て全校生徒が騒いだことはもちろんですが、クラスの生徒はみんな彼女が来たことを喜んでいました。
それでも私は、彼女を家に帰してしまったのです。

私が彼女を家に帰してしまったことに、みんなは驚きました。
私の気持ちをクラスのみんなに伝えました。
「彼女が今日、登校してくれてすごくうれしかった。きっと、みんなの思いが伝わったのだと思う。それなのに彼女を帰してしまって、ごめん」
クラスのみんなは私が謝ったことに驚いていました。
私は「でも、彼女が登校するときには彼女らしく登校して欲しいんだ。もっと肩の力を抜いて登校して欲しいんだ。きっと彼女はあのまま登校しても疲れてしまう。もっと彼女らしさを大切にして欲しいんだ」と、その理由を話しました。
みんなは分かってくれたようでした。
その翌日からも、彼女の家にクラスの生徒は寄っていました。