今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊
死を前にした親が子に望むのは「人格」と「人望」です。
形あるものは失われます。
だから、心を残したいと人は願うのです。
私がこれまでに看取りにかかわった患者さんの中には、幼いお子さんを残していかれる方もたくさんいらっしゃいました。
そうした方々の多くは、決してお子さんに「地位や名誉を手にしなさい」「お金をたくさん稼ぎなさい」などと言いません。
みんな勉強はそこそこでもいいから、人に愛されてほしい、周りの人と支え合って生きていってほしいと望むのです。
私が受け持っていたある会社の社長さんは、がむしゃらに働いて1代で会社を大きくしました。
彼は人を信頼するのが苦手で、どんな仕事でも最終決定は自分で下していたため、常に多忙でした。
もちろん、家庭や自分の健康を顧みることなく、ガンが発見されたときには症状はかなり進行していました。
体力は急激に衰え、当然のことながら出社どころではありません。
ワンマンだったため、社員との関係もうまくいっておらず、ガンであることが分かったとたん、部下や取引先は潮が引くように離れていきました。