当たり前の日常

ホスピス医の著書から

大病や歳を重ねると、「もう一度、自分の口で食事をしたい」「もう一度、自分の足でトイレに行きたい」と思うようになります。
つまり、当たり前の日常を望むようになるのです。
病気やケガをしたとき、人生の最後を意識したとき、人は否応なく非日常の世界に連れていかれ、それまでの日常を振り返ります。
そして、ようやく自分が多くのものを手にしていたことに気づき、感謝するようになるのです。

でも残念ながら、人が非日常を抱えながら生きることは不可能なのです。
例えば震災は発生し、物流がストップしたり、停電が頻繁に行われたときは誰でも日常のありがたさに気づきます。
でも、やがてインフラが復旧し日常が戻ると、その思いはだんだん薄れていくのです。