弱点を隠さない

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

こうした体験があるから、マギーさんは子どもたちが自分の弱点を、人にも言えずにどれほど悩んでいるかを知っていたのでしょう。
そして、それをさらけ出してみれば、とても気が楽になるし、大した悩みでもないことに気づくだろうと思ったにちがいありません。
最初は「恥ずかしくて言えない」とためらっていた子どもたちも、マギーさんの励ましで次第に打ち明け始めました。
そして、隣のクラスに行って、その弱点を話の中に織り込みながら、手品を披露することができたのです。

僕の講演を聞いた若者が、「ぜひ、中村さんの店で働きたい」と訊ねてきたことがありました。
彼の気にかけていた点は、片方の耳が聞こえないことでした。
ウエイターとして彼に働いてもらうことにしたとき、僕はマギーさんの弟子、マギー審司さんの真似をしたらどうだと言いました。
マギー審司さんは、片耳を抑えておいて、ポンと大きな耳を出すのをネタにしています。
ですから、片耳が聞こえないことを隠す必要はない、いっそのこと武器にしてしまえと彼に言いました。
「自分はこういうわけで、こっちの耳が聞こえないんです。すんませんが、もうちょっと大きい声で言ってください」と、お客さんにネタにして話したらええんや。
そうしたら、お客さんは「へーっ、あんたおもろいね。隠したりしないんだね」と、君のことを覚えてくれるかもしれん。
それを聞いた彼は、「でも・・・」というどころか、自分だけのネタを編み出しました。
「すんまへん。こっちの耳は聞こえないものですから、ご注文はこっちの耳に入れてくれませんか」
そう言いながら、おもちゃ屋で売っている大きなつけ耳をパットだし、まるでマギー審司さんみたいに注文を取ってみようと考えはじめたのです。