延命の中身が重要

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

ガンは体の中に発生した、命令に服さず増殖する異分子です。
したがって、これを敵として認識して攻撃しやっつけるのは自然の仕組みです。
ところが、この仕組みは年齢と共に衰えます。
したがって、年寄りにガンが増えるのは当然のことなのです。

年寄りのガンは、「もう役目は済んだから、還ってきていいよ」という、あの世からのお迎えの使者と考えていいはずです。
だとしたら、丁重に扱わなければなりません。
放射線を浴びせたり、抗がん剤で叩くなど、もってのほかです。
そんなことをするから、ガンの方も暴れて痛みが出たりするのです。
何の手出しもせず、共存を心がければ、普通は穏やかに死ねるのだと思います。

そこで注目したいのが、俳優の入川保則さんです。(2011年12月24日に逝去)
2010年7月、リンパ腫転移のある8センチ大の直腸がんが発見され、手術。
2011年1月、肝臓への転移が2か所見つかりました。
担当医からは、「無治療だと半年から1年、抗がん剤治療をすると2年くらい延命できる可能性がある」と告げられたそうです。
しかし彼は、「役者は舞台が命。抗がん剤の副作用でよれよれになって、舞台に立てないようなら、これは死んだも同然」といって、治療を断っています。
まさに延命の中身のことをいっているのです。
長く生きればいいというものではない、見事な人生観、死生観だと思います。