幻の手品ショー 2

数年後、私たちは夫婦になった。
ある日、デパートで一緒に買い物をしていたら、おもちゃ売り場で手品の実演販売をしていた。
ボールが消えたり、増えたり、あらぬところから出てきたり。
私が感心しながら見ていたら、マジシャンのお兄さんが「どうぞよくご覧になってくださいね!」と声をかけてきた。
すると隣にいた彼が、グッと私の腕を引いた。
「ほら行くぞ!」
「なんでー 面白そうじゃん」
彼は独り言のように「ああいうのはなあ・・・」と言った。
「どうせ買ったって、今日明日すぐできるもんじゃねえんだよ。結局、すげえ時間かけて練習しなくちゃ、うまくできないもんなんだ!」

なぜかその言い方には、妙に実感がこもっていた。
私はサプライズをするのが大好き。
こっそり準備をしていると、相手の喜ぶ顔を想像してついニヤニヤしてしまう。
逆にサプライズを受けたとき、相手も自分を驚かせようとニヤニヤしながら準備したのかなあ、なんて想像すると幸せになれる。
もうそれだけで十分!!