幻の手品ショー 1

ある日、部屋を掃除しているときに、どかしたタオルの下から紙袋が出てきた。
見覚えがなかったので中を覗いてみると、おもちゃのようなものが入っていた。
どうやら手品グッズのようで、銀色の輪っかや、つやつやした赤いハンカチ、シルクハットっぽい帽子などが入っていた。
家にあるもので私の知らないものといえば、彼のモノと決まっている。
だけど何でこんなものが?・・すぐにピンときた。
彼が「今年の誕生日はびっくりさせてやる」とかなんとか言っていたから。
私はあわてて手品グッズをもとの場所に戻して、何も気づかなかったことにした。

翌日は私の誕生日。
彼からプレゼントをもらって、一緒にケーキを食べて、そして私は彼の手品ショーが始まるのを今か今かと待っていた。
でも一向に始まらず、彼もそんなそぶりも見せない。
「手品は?」と聞くわけにもいかないので、黙って待っていたが結局手品らしいことは何もなく誕生日は過ぎていった。

あれっ、彼の目を盗んでこっそり探してみたけれど、どこにもあの手品グッズがない。
私は夢でも見ていたのか。