幸福度調査

1993年の研究では、「高齢者の満足」は若者より高いという結果が出ています。
若者は欲望が多く、求めるものが手に入らない可能性が高いため、満足度が低くなってしまうのだそうです。
歳を重ねると、余計な欲望が少なくなり、現状との折り合いをつけやすくなるので比較的気持ちが満たされやすく、満足度が向上するのではないかという分析です。

一方、諸外国の調査では、年齢と幸福の間にU字形(若者と高齢者が熟年層よりも幸福)の関係があるとの結果が出ています。
理由としては、熟年層に入るころには自分の人生がある程度定まってくるので、若いころ持っていた野心を実現することを諦めざるを得ないので幸福度が下がるが、その後の高齢期に入ると、考え方を改め、後半の人生を楽しく充実させようと努力するので、幸福度が高まるのではないかと考察されています。

アメリカの1960年代には、「幸せな人」とは、若さ、健康、高学歴、高所得、楽観的、強い自尊心、高い知性といった要因に結びつく人で、また競争社会では、若さ、健康、知力といった「能力」の喪失は恐怖であり、忌避すべきものと思われていました。
でも、実際はそうではなかったわけです。

2002年の調査で、十分な所得がないために生活必需品を買うことができなかった割合は、日本では約4%でした。
96%の人が生活必需品を買うことができたのです。
アメリカでは、20%の人が生活必需品を買うことができません。
でも日本人の幸福度は、世界的に見てもあまり高くありません。
ゆえに、「物の豊かさ」が「心を満たすわけではない」ことが分かります。

老いは能力の低下ではありません。
老いは、若い時には見えなかったものが見えるようになることであり、老いは、人生を新しく生まれ変わろうとしているとも言えるのです。