幸せを求めても

ある代官が、一休禅師に極楽浄土について尋ねました。
「地獄や極楽は本当にあるのでしょうか?」

西の空は夕焼けで金色に美しく染まって、まるで極楽のように見えることから極楽は西にあると、当時は信じられていました。
また、東の空が朝日で色鮮やかになるので、極楽は東にあるとも言われていました。
さらに、お釈迦様が北枕にして休んでいたことから、極楽浄土は北にあるとも思われていたようです。

これに対して一休禅師は
「極楽は、西とはいえど東にも、キタ道探せば、みんなみにある(みんな身にある)」と言いました。

極楽は西にも東にも北にもありません。
極楽は「自分の身の中にある」のです、と諭しました。

ドイツの詩人カールブッセは、「山のあなた」という作品でこう書いています。
山の彼方に「幸い」が住むというので、友人と訪ねてみた。
ところが、山の彼方に「幸い」というものはどこにも存在せず、涙を流しながら帰ってきた、と。

幸せは求めに行くものでも、手に入れるものでもないということです。