幸せも成功も変化していくもの

うまいこと老いる生き方

54歳精神科医 どんなに自分が嫌いだという人も、せっせとご飯を食べてお風呂に入り、自分の世話をしています。それって、無意識に自分の体を大切にしているからやっていることですよね。

92歳精神科医 とにかく極力、自分のしたことの正解、不正解を判定したり、評価したりしない方がいいね。自分が幸せかどうか、人生が成功しているかどうかなんかも、あまり深刻に捉えないでええと思うよ。結局、成功も、幸せも、刻々と変化していくものやからね。

54歳 先生は、いつお迎えが来てもいいと、70歳ころからよく口にされていましたよね。どうして先生は、死ぬということに対して潔く、冷静に迎えられるのですか。

92歳 そうやね、やっぱり戦争中に生きるの死ぬのかの時代を生きてきて、死というのは若者だろうが年寄りだろうが、誰にでも突然訪れることやと、肌身に沁みて感じていたからなあ。空襲に遭うこともあれば、せっかく戦争が終わっても周りは栄養失調で結核になってバタバタ倒れていく。多感な時代をこんなふうに過ごせば、嫌でも死に対して開き直れるよ。