子供を30年間探し続けた 1

今から1300年前の奈良時代のこと。
琵琶湖畔の滋賀の里には茶畑が広がっていた。
澄み切った青空のもと、子供を連れた女性数人が茶摘み見物に来ている。
乳飲み子をあやしながら、茶摘みを楽しんでいた。

ところが次の瞬間、一陣の突風が吹いたかと思うと、オオワシが舞下り、さっと子供を掴んで大空に舞い上がってしまった。
「返せ! 返せ! 光丸・・ 光丸~・・」
雲のかなたに消えた我が子を追って、母は野をかけていった。

夫に先立たれ、1子光丸の成長だけを楽しみにしていた矢先だった。
母は、そのまま家を出て当てもなく探し回った。
「光丸を知りませんか? オオワシに連れ去られた可愛い子どもなのです」叫び続ける彼女に「かわいそうだが、もう死んでいると思うよ」という人もいる。
それでも母は「いいえ、きっと生きています。私を慕って泣いている声が聞こえるのです」と、あきらめる様子はありませんでした。