子どもの命と引き換えに逝った妻

妻は3人目の子を出産するとき、まだ臨月に3か月以上あるのに強い黄疸が出て、出産はもちろん、本人の命すら危ぶまれ、医師には断念するように告げられました。
しかし、本人は強く出産を望み、医師はもちろん私の言葉すら聞きません。
やむをえず本人の気持ちを尊重し、成功率10%もない出産にかけ、帝王切開に入りました。
母子ともに命の危険が迫っていましたが、奇跡的に成功し、子供は1700グラムで妻も何とか命を取り留めることができました。
しかし、妻はすでに多数転移のある胆のうがんで、あと数か月の命と宣告を受けました。

結局妻は、6か月後に他界してしまいました。
三男は母の顔を一度も見ることはありませんでした。
あの時の妻の頑張りがなければ三男の人生はなかったと思うと、親、特に母親の恩がないと生命すら維持できないと感じた瞬間でした。
亡くなる前の妻の最期の言葉は、3人の子供の名前を呼び「よろしくお願いしますね・・・」でした。

自分のことよりも、子供のことを最後の最後まで案じながら遠い世界に旅立ってしまった妻のことを、8年経った今でも鮮明に覚えています。
8歳になった三男が、ものの理解ができるようになった時、出生時のこと、お母さんが亡くなるときのことを話してあげたいと思っています。