子どもに真実を告げること

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

娘の心境にも変遷があったようで、診断後1~2週間は、夜、私が寝ている横に来て「お父さんに死んでほしくない、長生きしてほしい」と抱きついてきた。
1か月ほど経過したある日のこと、一緒に風呂に入っていると、こんなことをポツリと言う。
「お父さんが死ぬまでの間に、もう一度みんなで温泉に行きたいね」
私は苦笑して返した。
「もう一度ってなんやねん。もうちょっと行けるわ!」
私の中で、少しだけ気持ちが軽くなった。
長女は僅か1か月で父親の死が近いかもしれないことを咀嚼し、皆で思い出をつくろう、楽しいことをしようという思いまで到達している。

子どもはたくましいし、言葉が理解できれば、ショックを受けても、親が思っている以上に早く立ち直る。
だからこそ、蚊帳の外におくべきではなく、真実をしっかりと説明し、知らせるべきなのである。