子どもたちにも事実を伝える

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

10月28日に中央病院に入院してからは、分子標的治療薬「ジオトリフ」の副作用による下痢に悩まされた。
がん治療が初めての私にとっては、当初肉体的、精神的負担が強く、薬と付き合う限り、この状態が一生続くのかもしれない・・・と、治療開始当初は憂鬱になった。
お見舞いを申し出てくれた方には、心苦しかったがそれを断った。
下痢の症状がひどく、とても通常の精神状態で対応できる自信がなかったからだ。
11月1日には、無事退院することができたものの、妻と2人でランチを楽しんだのもつかの間、すぐに下痢の症状が襲ってきて、トイレから小1時間出てこれず、再び落ち込むことになってしまう。

ガンの宣告を受けたとき、私には9歳の長女と5歳の長男がいた。
私は、まだ幼い子どもたちにも、妻に対するのと同じように、私の病気について詳しく説明した。
「お父さんな、芦屋のおばあちゃんと同じ肺がんになってしまってん。脳に転移していて、早くに死んでしまうかもしれない」
9歳の長女は、3歳の時に曾祖母が肺がんで亡くなるというお別れを体験しているので、私の話しを一応は理解できたようだった。
5歳の長男は、父親がガンという病気になったことは理解できたようだが、遠隔転移したがんが治らないもので、命にかかわる事態であることは、うまく理解できなかったようだ。

子どもたち話しをしたのは、にこれまで患者さんと接するなかで、小さなお子さんを持つ患者さんに「子どもたちが知りたがる限り、事実は隠さない方がよい」ということを一貫して伝えてきたからである。
「衝撃を受けたり、一時的に落ち込んだりすると思いますが、みな立ち直ることができます。それよりも、自分たちが頼りにしている母親や父親が臥せっていたり、悲しんでいたりする意味を教えてもらえないことのほうが、子どもたちの立ち直りや成長に悪影響を与えてしまうかもしれません」