娘よ 1

59歳 女性の投稿

あなたが嫁いでもう五年なのに、二階のあなたの部屋に入ると、まだあなたの匂いがする。
先日鏡台を動かしたとき、奥の方にあなたが使っていたピンク色の口紅が一本転がっていました。
ふたを開けると、そこからもあなたの匂いがしました。
私はあなたの匂いが詰まった部屋で、あなたへの想いに浸りました。

七年前、私にがんが見つかったとき、「勤めながらお父さんとお母さんの世話はできない・・」からと退職し、私の看病と家事をしてくれました。
どんなに忙しくても、私を見舞ってくれましたね。
満面の笑顔をしたあなたが入ってくると、病室がパッと明るくなりました。
私がこんな病気になって、さぞ悲しいだろうに、あなたはどこで泣いているのだろうと、あなたが帰った後、あなたが水を取り替えてくれた花を見ながら、涙をこらえました。
毎朝、エプロン姿で洗濯物を干し、玄関の掃除をし、お昼には荷台に大根とネギを乗せ、さっそうと自転車をこいでくるあなたの事を、退院した後、近所の人に聞きました。