委ねること

ホスピス医の著書から

老いて病を得ることで人生は成熟していきます。
「人に迷惑をかけたくない・・」という思いに苦しむのは、元気なときに自分の人生をしっかりコントロールしてきた人に多いようです。
「自分はこうでなければならない!」
「人には頼らない!」
「努力すれば報われる!」
という信念を持ち、厳しい競争社会を戦い抜いてきた人、そのような人ほど人生の最終段階で、それまでの価値観が全く通用しなくなり、アイデンティティを失ってしまうようです。

幼いお子さんがいる親御さん、会社を経営していた社長さん、財産がありすぎるお金持ちも苦しむ人が多いようです。
この世に残していく未練が多いので、「生きていたい!!」という思いが強いのです。

しかし、こういう患者さんたちも苦しみぬいた果てに、少しずつ自分が抱えていたもの、それまでに頑なに守っていた信念などを手放し、他人に委ねられるようになっていきます。