失って価値に気づく

人間は失ってみてはじめてその価値に気づきます。それまでは当たり前だと思っていたものが、当たり前ではないことが分かります。
健康のありがたさは病気になってみないと分かりません。

ただ「ガン」だけは、生きていることへの素晴らしさに気づかせてくれると聞いたことがあります。
「『あなたの余命はあと半年です』と告げられたら今までの風景が全く違って見えた」
「何でもない夕焼けが、道端の花がそれは美しく見えるようになった」ということは、多くの患者さんから聞く話しです。

大病を患っていない人たちにとって、生きることの素晴らしさにどうやって気づけばいいのでしょうか。

 もし明日死ぬことが分かっていれば、今日という一日を「大好きな人にお別れを言ったり、少しでも人生の後始末をつける」ために生きることでしょう。
でも多くの人は、自分がいつ死ぬのか分かりませんし、あえて死を避けて考えないようにしています。
そこでやりたいことがあっても「まあ、そんなに急ぐことはないだろう」と考えて先延ばしにすることがほとんどでしょう。

人生の前半は「いつ死ぬかもしれない」という思いをエネルギーにして、自分を駆り立てていく生き方もあるかもしれません。
でも後半生になったら歩みのスピードを落として、ゆっくり周りを見渡していくゆとりを持つことも大事なように思います。