夫婦の立場が逆転

70歳からの選択 和田秀樹

一般的に女性は、男の側が頼ってきたり、子どもっぽく見えたりすると、支配欲求を持つことが多くなります。
だから、様々なことでガミガミ言うようになるのです。
たとえば、夫がラーメンばかり食べていて、ちょっと下腹部が出てきた、血糖値や血圧が高めだとなったら、ラーメン禁止にするとか、そういう些細なことを含めて、支配的になろうという欲求が高まるのです。

私が聞いた話では、定年退職して2人だけの生活になった途端に、妻から門限を決められてしまった、というケースがありました。
まるで妻の子どもになったかのような生活が始まるのです。
たまには妻のご機嫌をとろうとして食器を洗えば、「ここの汚れが落ちていない」「いい加減なんだから」「やるならちゃんとやって、二度手間になるじゃない」など、容赦ないお小言が飛んできたりします。
ゆっくりするどころか気が休まらず、家には居場所がないと、いたたまれない気持ちを訴える夫も多くいます。

これまでは、自分が稼いできたという自負もあったのに、それが崩れてしまったことで、自己愛が傷つき、精神的にも弱弱しくなっていることが珍しくないのです。