夫婦というもの

70歳からの選択 和田秀樹

20~30代で結婚したときには、まだまだ社会経験が少ないなかで、相手をルックスだとか年収などで選ぶということもありがちです。
それで子どもが生まれたら、成り行き上、責任があるから育ててきたけれど、夫婦としては恋愛関係というよりも、子どもの父親、母親としての家族が続くことが多いのです。
そのような夫婦が、子どもも離れていって2人になった時に、残りの人生をこの相手と添い遂げられるか、2人で毎日ご飯を食べられるか、そしてリアルな話、相手の介護ができるかということも、もう一度問い直さなければならないと思うのです。

そもそも一緒にいて息苦しくなるのは、距離が近すぎるからです。
もしも妻が夫を不愉快に感じているならば、それは夫が変わったわけではなく、定年で夫が会社に行かなくなったことで距離が近くなったからです。

では、どのくらい離れればいいのかが問題になりますが、簡単に言うと、夫と妻という関係を解き放ち、お互いを「同居人」と考えるという、一種の心理学的な開き直りです。
具体的には、買い物、食事作り、食事は別々に行う。
洗濯は各自で行う。
外泊以外の外出はいちいち断らない。
外泊や旅行は万一の時に備えて報告するが、余計な詮索はしないなどです。