夢を抱いていた頃のスピリッツを忘れない

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

師匠の下で東京で行商をしていた頃、僕と一緒に汗を流し、共に将来を語り合っていた親友の1人に、吉越君がいます。
吉越君とは18歳の頃から「今はどん底で訳の分からないことをしているけれど、いつかこういうふうになってやろう!!」と、いろいろな話しをしていました。
吉越君は、師匠の会社を卒業するのも僕より遅く、独立した後も、何をやっても今1つうまくいきませんでした。
それが今では、日本でボロボロになったブルドーザーやトラクター、ユンボなどを安価で集めてきては、ラオスやミャンマーなどアジアの発展途上国に運び、それを使って農業の効率化を教えに行っています。

その吉越君に、僕はありがたい言葉をもらうことがあります。
「おまえ講演したり、本を出版して喜んでいるのか。そんなくだらないこと、いつまでやっているんだ? そういうことをやって、先生などと言われて喜んでいるんじゃないぞ!」
彼はかつて純粋に、「未来を企んでいるころの気持ちを忘れるな! 先生などと呼ばれて有頂天になるな! おまえはそれで満足なのか!」と、戒めてくれているのです。
吉越君は、19歳の頃、師匠が買ってくれた、ナイロン製のジャンバーをボロボロになった今でも着ています。
「このジャンバーを着ると、あの頃のスピリッツが蘇ってきて、気合が入る。このジャンバーを着ていた頃の気持ちを忘れてはいかん!!」
彼は、自分に言い聞かすように言いました。