夢の裏には闇がある

夢をかなえるゾウ 水野敬也

いのちは無くなるのではなくて、粒子という同じものが形を変えて続いていくだけです。
今自分をつくっている粒子は、かつては水であり、土であり、木であり、他の生物だったでしょう。
変化し続けるこの世界は、何で人間をつくりだしたのでしょう。
私たちは自分の意志に関わらず、人間としてこの世界に生み出され、いつかは他のものに形を変えていく、ただそれだけの存在なのではないでしょうか。
どうして人間だけが、この根本的なことを忘れてしまったのでしょうか。

人間が存在する理由は何でしょう。
それは、苦しみも、その苦しみに支えられた喜びも、すべてを経験するためかもしれません。
水にも土にも、そして他の生物にもできない、人間という形でしかできない経験をするために人間は存在するのでしょう。

夢は追っているときが一番楽しいです。
光が差す場所には必ず闇が生まれてくるように、夢も叶えてしまうとその裏側に隠れていた闇を知ることになります。
完全な光を見ていられるのは、夢を追っているときだけです。

死後の世界を想像し、そこが光で満たされた場所だと考えたのは、あながち間違いではなかったかもしれません。
それはつまり、生きている間は「夢を追い求めている」状態にできるからです。