哲学の役割

悩みが積み重なり、肉体的にも精神的にも追い詰められ「死ぬしかない」と思ったときに、机上の空論のように思われる哲学が、心の支えとなることを知っておいた方がいいと思います。

「死ぬ」ということは、普通まったくの他人ごとです。
親戚の人が亡くなったとか近所の方が亡くなった、という形で他人事としては理解できますが、自分のこととして捉えることはまずありえません。
それでもある時に、不意に漠然とした「不安」に襲われることがあります。
先行きへの得体のしれない不安、それは自分もまた、いつかは死ぬ存在だという「死の不安」なのだと考えられています。

しかし、そもそも「死」を本気で感じることは難しいです。
頭で分かっていても、本音ではだらだらと過ごしていたいし、「死」なんて考えずに陽気に暮らしたいのが人間の性です。

心理学者のカール・ユングは、人間の心理を「表と裏」の2面でとらえ、表の顔の裏側にもう1人の自分が蠢いているのを洞察しました。
たとえば「死にたい」と訴える人は、自分が死ぬ夢をよく見るのだそうです。
それは「今の自分を破壊して、生まれ変わりたい」願望だというのです。
「死にたい」と訴えるのは、肉体的に死にたいということではなく、社会的に死にたいということ、つまり生まれ変わりたいということを訴えているのです。