吉田松陰と良寛さんと

日本人の死に時より 医師の書

吉田松陰は「留魂録」で弟子たちに、次のように書き残しています。
人の命には定まりがなく、穀物のように決まった四季を経るものではない。
例えば、10歳で死ぬ者には10歳なりの四季がある。
自分は30歳で死ぬが、すでに穂を出し、実りも得た。

泰然と死を迎えられれば幸せなのは本人ですし、死を逃れようともがけば苦しいのはやはり本人です。
寿命を超えた長生きには、ろくなことがありません。
無理な寿命を得ても待っているのは「こんなはずではなかった・・」という絶望の日々だけでしょう。

良寛さんの言葉にも死に通ずるものがあります。
1828年に起きた大地震の後、知人に送った有名な手紙の一文です。
災難に遭う時節には、災難に遭うがよく候。
死ぬ時節には、死ぬがよく候。
是は、これ災難を逃るる妙法にて候。

つまり人知を超えた厄災は、逃れようとすればそれだけ苦しみが増え、避けようと作為をほどこすほど煩いが大きくなるということです。
だから死に時が来たら、死ぬのが一番楽なのだよと、教えてくれるのです。